2012-02-27

Somとの再会

またまた、随分と間があいてしまいました。

先日「第4回恵比寿映像祭」を見に東京へ行って来ました。
ニューヨークで、私と同じACC Granteeだったタイ人アーティストで、このブログにも度々登場したSomの作品が展示され、彼女が来日していたためです。


彼女のビデオインスタレーションが2作品設置されています。
オープニングのレセプションにも招いていただいたので、そこにまずは顔を出しました。
数ヶ月ぶりに会ったSomは、相変わらずずっとニコニコ笑っていました。
この日は、彼女の作品を見せてもらって、少し解説もしてもらいました。
偶然、ACC Tokyoのスタッフとも会って、3人で少しだけでしたが話せました。
(余談ですが、ACCのGranteeとしての生活が終わっても、ACCのスタッフは私たちアーティストのことをいつまでもこうして応援してくれるのです。そして、ACC Tokyoのスタッフには、渡米迄言葉では言い尽くせないほどお世話になりました。)

オープニングだし、とにかくネットワーク作りの名人であるSomのところには次から次へと人が訪ねて来ます。
「明日ランチでゆっくり話そう!」と言う事になりました。
お互いに「See you tomorrow!」と言ってから、「なんだか、ニューヨークに戻ったみたいだね!」と笑いました。

そして、翌日。
ニューヨークの思い出話、帰国してからの自分たちの活動や制作の話、他のGranteeのことなど、話題は途切れる事無くおしゃべりを楽しみました。
現在の彼女の取り組んでいる作品、とても面白そうでぜひ見たいと思いましたが、1つはタイに設置される作品で、もう1つは巡回はするが東南アジアだけだということで、ちょっと残念。
タイに彼女の作品を見に行きたいなあー。

この日、彼女は私にプレゼントをくれました。
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かわいいー!!!!

これは、昨年夏に横浜で行われた展覧会で公開制作&展示した彼女の作品《welcome to LOVE LINK DOLLS - Your Voice》の一部です。観客参加型の作品で、実はこのカワイイ顔の中には、レコーダーが仕込まれていて、その場で喋り声を始めいろんな音を録音し、すぐそのまま再生する事ができます。実際は、かなりの数があるそうです。この子達が歌う、喋る、それがどんどん重なってその空間に「音」が溢れるという作品です。
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作品について、彼女のHPで見る事が出来ます。
<Welcome to Your Voice 2nd ver Japan>



さて、ランチして、この日の別れ際もやっぱり「See you tomorrow!」
なぜなら、翌日はSomのアーティストトークがあり、彼女が作品について喋る事になっており、私もそれを聞く事にしていたからです。

今回展示されている2作品のうち、「Dot Scape」という作品については、彼女は一度ニューヨークでプレゼンしており、私もそれを聞きました。ただ、私の英語力もまだあまり上達していなかった頃だったせいもあり、その時は全てを理解出来ませんでした。Somにそれを言うと、彼女自身もあの時はあまりうまく喋れなかったということでしたが。

今回は、英語も前よりよくわかったし、何より通訳もいたのでばっちり。
P2110248_s.jpg
トーク中のSom。
後ろの画面に映っているのは、今回展示された作品のうちの1つ「Shooting Star」。


そして、私はSomのレクチャーを聴いて、大変にショックを受けました。
特に「Shooting Star」という作品についてです。
そのタイトルのように、まるで流れ星のように、光が映像の上から下へと流れて行きます。そして、たまに、金属系の大変美しい音が聞こえます。
本当に、美しい音で、「後でSomにこの音どうやって作ったのか、何から採ったのか聞いてみよう」と思っていました。
よく見ていると、上から下へと流れる光は、実は夜の車窓からの風景で、90度回転させたものだという事に気付きます。

実際のこの映像は、チェンマイ~バンコク間の列車の窓から撮影されたそうです。
そして、時折聞こえた金属系の音は、銃の発砲直後に薬莢が下に落ちた音でした。彼女は、この薬莢が落ちる音だけを切り取って使っていました。

ところで、2010年5月にバンコクで、大規模な反政府デモが起こりました。
この映像はその時に撮影されたものでした。この反政府デモに対し、政府は首都バンコク周辺に治安維持法を発令。暴徒化したデモ鎮圧のために治安維持部隊を送り込んだということでしょうが、実際には多くのジャーナリストが非武装のデモ隊が治安維持部隊によって銃撃されるところを目撃していたそうです。
「このとき、政府はメディアをコントロールの下に置き、何も大きな問題は起きていない、何もなかったということにしようとしてた」とSomは語りました。
非武装のデモ隊にも銃を向けたとなると、これは虐殺と言えるでしょう。


映像祭のホームページ、Somの作品紹介ページには、こうあります。

「メディアは嘘をつくことができる。映像から聞こえてくる銃声や星の光。私たちが何を、いかに見ているのか、スパパリンヤの映像の批評性は、メディアを介した私たちの眼差しに対するリアリティを露にする。 」
(注:スパパリンヤはSomの本名)


私が、美しい音だなあと感じた音は、銃を発砲した時に聞こえる音の後ろ半分を切り取った音だった。
最初は、光が上から下へと流れて行くとしか思っていなかった映像は実は車窓だった。

Somのトークが終わって、少し話した時「あの音ってきれいだなと思って聞いていたけれど、銃声の半分を切り取ったってわかってすごくショックだったよ」と話しました。
彼女は「そうそう。あれ、銃声の半分なんだよね!へへへっ」と笑って答えました。

ニューヨークでも感じた事ですが、いつも穏やかでニコニコしている彼女だけど、時に激しさを垣間みる事がありました。
そして、思い出しました。
私たちがニューヨークに滞在していた2011年7月。
タイでは総選挙が行われ、インラック・シナワット氏がタイ王国初の女性首相となりました。
数日後Somと会った時に、この選挙について色々話しました。
この選挙とインラック・シナワット氏に関して、Somは結構色々と熱く語っていました。
いつも穏やかでニコニコしている彼女の中には、政治や社会に対する批評性が秘められている。そしてまた、彼女は自分の仕事(制作)に対しては大変に厳しい態度で臨んでおり、それらが彼女の原動力の1つとなるのでしょう。

彼女のトークの後、私は金沢に帰る事になっていたので、有楽町に行くという彼女と一緒に山手線に乗りました。そして、最後にハグをして、再会を約束して別れました。
そう言えば、ニューヨークで最後にお別れしたのも、地下鉄の車内だったな。

それぞれの仕事をそれぞれがきちんとしていれば、きっと再会の時は訪れる。
ニューヨークから帰って来る時に、そう思いました。
そして本当に今回Somと再会できて、さらにその思いを強くしました。
私も、頑張らなければいけません。

ACC本部のスタッフ、Angela、Phoebe、Tina、その他にも親しくしていたGranteeのみんな、アメリカで出会った人たちは、元気かな。
まあ、メールでちょこちょことお互いに近況を知らせ合ってるから、元気だって知ってるけど。
いつ会えるかなー。

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トークの後、Somと。

久々の更新、長くなっちゃったなー。
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プロフィール

りか♪

Author:りか♪
和歌山県生まれ。
愛知県立芸術大学作曲専攻を首席で卒業、同大学院修士課程、博士後期課程修了。博士(音楽)。
学部卒業に際し桑原賞(県知事賞)受賞。
現音作曲新人賞などのコンクールに入選する。2008年第29回入野賞受賞。2015年Iron Composer Conpetition(アメリカ)第3位。
現代音楽演奏グループ「アンサンブルトゥデイ」のメンバーとしてその解散まで積極的な作曲活動を展開する。また「ing Project」代表として、レクチャーやコンサートの企画を行った。2010年度Asian Cultural CouncilのGranteeに選出され、2011年アメリカ、ニューヨークにて研究調査を行う。
作品は、ALM RECORDSCAFUA RECORDSよりCDがリリース、ティーダ出版やイタリアのARS PUBLICA社より楽譜が出版されている。
愛知県立芸術大学准教授、金城学院大学(名古屋)、金沢大学講師。名古屋市立大学芸術工学部研究員。

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